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ベトナム関連のブログ

米中貿易戦争とベトナムと日本

前回書いた記事の続き、と言うか別記事ですが、高速道路つながりの記事です。

ベトナムで土地が10倍に値上がりしたってよ! - kicks.jp blog

ベトナムの高速道路

今年、世界経済に最も大きな影響を与えた(と言っても過言ではない)"米中貿易摩擦"。 ベトナムに興味がある私としては、この貿易戦争で日本が果たした役割は意外と大きいと思っています。
日本が何をしたかと言うと、、
ベトナムでインフラを整備した!
です。
ベトナムの高速道路は、かなりの部分がODAで開発されています。

アメリカに関税を掛けられた中国企業が、それを回避するためにベトナムに進出している、というニュースをよく聞きます。
なんでベトナムなのかと言えば、中国から近いからです。
中国とベトナムは国境で接しています。
そして、中国・深センとベトナムは意外なくらい近いです。

※ちなみに、深センは、中国のIT(IoT)の中心地です。iPhoneを受託製造して世界に輸出しているFoxconnの工場も深センにあります。
ちょっと調べたらiPhoneに関税はかかってないみたいですが。
https://www.cnbc.com/2019/12/13/apple-dodges-iphone-tariff-after-trump-confirms-china-trade-agreement.html

深センから、ハノイまでは直線距離で、約850kmです。
日本でいうと、東京から博多(900km)くらいの距離です。
深センから北京(1900km)より近いのは当たり前として、深センから上海(1200km)よりも近いです。
ベトナム国内では、ハノイからホーチミン市(1100km)よりも近い。

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ハノイと深セン

でも、隣に、国境で接している国があるからといって、それだけで工場移転の候補地となるわけではありません。
道路や港などのインフラが整っていないと、どうにもならないですね。
ところが、なぜかインフラが整備されていた。
なぜか?
それは、、
日本が技術と資金を支援してベトナムにインフラを構築したから。 

ちょうど去年から今年にかけて、中越国境から、ハイフォンの港までの高速道路が整備されたという、偶然とは思えないくらいのタイミングです。
中国との国境の町ランソンから、ハノイ近郊を経由してハイフォン港まで、高速道路で楽に移動できます。
ハノイ - ハイフォンの高速道路は、別記事でも書きましたが、すごーく良い道路でした。
精密機器を運んでも揺れで壊れることはなさそうです。

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ネットで調べた限りでは、車で行けば15時間です。
深センから中国国境まで10時間。
ランソンからハイフォン港まで4時間30分。合計15時間です。国境通過にどれくらいかかるかは知りませんが。。

大型コンテナ船が停泊できる港自体も2018年に完成しました。Lạch Huyền港(ラックフェン港)。
韓国サムスンのスマホ工場も、ハノイの北40kmの高速道路沿いにあって、そこからおそらくハイフォン経由で世界へ輸出されています。

関税回避

アメリカからしてみれば、関税という防護壁を張り巡らせたのに、そのちょっと南側(ベトナム)に優秀な抜け道があって、通り抜け自由な状態になっていたなんて予想外だったのではないでしょうか。

NHKのウェブ記事にもありますが、中国で生産した製品にMade in Vietnamっていうラベルを中国で付けてしまって、それをベトナムから輸出するなんていうこともあるみたいです。
https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20190905/index.html

この抜け道は、中国にとって相当プラスになったはずです。
もちろん、ベトナムに対しても関税をかけるという方法もありますし、実際検討しているとトランプは発言しました。
しかし、そうやって中国以外の国とも対立を深めると、今度はアメリカが孤立してしまうというリスクもあります。
中国、日本、インド。または、中国、日本、ASEAN。
この3つのGDPを足し合わせれば、アメリカ1国のGDPを超えます。
今後の経済成長という視点で見てもアメリカはアジア各国と全面対立という方向には持って行きづらいのです。

そもそも、アメリカが関税をかける主な目的は、貿易赤字を解消して、アメリカ国内に製造業を戻したいということでした。 しかし、中国に関税をかけたところで、工場は戻らず、ベトナムに移転するだけ。
世界経済の中心がアジアに移っていく流れは、関税では止められない、ということが証明されました。

結果的には、日本は中国に加担したことになるのかもしれませんが、私は、個人的にはアジア経済が発展することを願っているので、今回のベトナムの「漁夫の利」は非常にうれしく思っております。
米中の摩擦は、世界の覇権争いですから、一進一退しつつも、長期化することは確実です。
ベトナムの「漁夫の利」もしばらく続きそうですね。

アメリカの貿易赤字額

2018年、米国の対中赤字は、
$378.6 billion
対ベトナムの赤字は、
$38.3 billion
という事で、ベトナムは中国の10分の1でした。
人口は10分の1以下、経済規模では、50分の1程度の割にはベトナムは頑張ってますね。

https://ustr.gov/countries-regions/china-mongolia-taiwan/peoples-republic-china
imports were $557.9 billion.
The U.S. goods and services trade deficit with China was $378.6 billion in 2018.
https://ustr.gov/countries-regions/southeast-asia-pacific/vietnam
imports were $50.5 billion.
The U.S. goods and services trade deficit with Vietnam was $38.3 billion in 2018.

ベトナムで戦争と言えば、ベトナム戦争・・・

1970年前後にベトナム戦争でアメリカに国土をボロボロにされて、1979年に中越戦争で中国に攻め込まれたベトナム。
両方とも結果的に返り討ちにしたわけですが、経済発展という観点では絶望的な損害を受けました。
それから、数十年後にやっと"戦争"で特需の恩恵を受けるベトナム。
早く今の先進国並みになるといいですね。

ちなみに、ベトナム人はアメリカより中国の方が嫌いなようです。
アメリカに対しては、もう40年以上が経ち、歴史上の出来事という認識になりつつあるのかもしれません。
中国は、現在進行形で南シナ海で領有権争いをしていて、ベトナムの漁船が中国の巡視船という名の軍艦に体当たりで沈没させられたりしています。
歴史的にやられたことより、現在進行形で侵略される方が反対の感情に影響を与えるんですね。

以上でした。